今回の店舗作図集は、エレガント系のレディースショップですが、某メーカーの有名ブランド婦人服です。
図面はかなり過去のものですが、当時は百貨店のテナントとして配置されたようです。
最近でも人気ブランドとして健在していますが、そのショップデザインはかなり変わっている模様かと・・・・。
しかし、この作図事例は、店舗設計を目指す方にはとても参考になると確信しております。ぜひ、勉強していただきたいと思います。
店舗環境図と什器図と2回に分けて投稿します。
VMDが明確な平面プラン
エレガント系婦人服店の平面図平面図を見る限り、明確なVMD計画が成されており、私的には素晴らしいショップだと思います。
「何故に素晴らしいか」というと、まず店頭での商品の打ち出し方。
間口が狭いながらも、柱を上手く活用しながらしっかりしたVMD計画が表現されている点です。
そして、このVMD計画はショップ奥にもちゃんと計画が成されています。
レイアウトも理想的で、通路巾もほどよいことから回遊性も良いと判断します。
三つ目は、店舗には必ずと言ってありがちなデッドスペースの活用です。
ほどよい箇所に、フィッティングルームとストックケースを配置して、売場には支障をきたすことを避けているところです。
こういったレイアウトは、見せ場や売り場が明確に構成され、おまけにVMD構築もしっかりなされて、理想的な模範店舗となり得ます。
このショップでは実施図面を担当しましたが、デザイナーさんのセンスは素晴らしいものを感じますし、しっかりしたVMDの知識をお持ちのようです。
器を造っても、MDがしっかりしていないと売れません。仮に、MDがしっかりしていても、見せ方が不明確であるならば、これもまた売れる店舗では無いでしょう。
ですから、MD+器+VMDの三位一体こそ、店舗での売り上げが見える店舗と言えるでしょう。店舗設計を目指す人は、この三位一体を理解することこそ良き設計者と感じます。
VMDが随所に施された展開図
続いて、エレガント系レディースショップの店舗環境図である展開図をご覧頂いています。
上記は展開図A、Bを表現しています。
店頭である展開図Aを見るとかなり間口が狭く感じますが、柱を上手く活用して見せ場を演出しているのが分かります。
余談ですが、展開図A左の壁面(リースライン左)がありますね。
これについては、百貨店とかファッションビルなどの、店舗間の共通環境と言って建築工事で成されるものです。
また、共通サインなども出てくるのですが、表現されていないところを見ると、この時点ではまだ調整が出来ていなかったと見受けられます。
余談になりますが、この図面を見ていると内装管理室に在籍中、私も多くのテナント調整が大変だったことを思い出します。
本題に戻りましょう!
次に、展開図C、Dを見てもらってますが、展開図Cには壁面奥が表現されています。
ここでは壁面中央にビジュアルポイント(VP)を設けることで、お客様へのアイキャッチャーとなり店舗内での回遊性を促します。
最後に、展開図E、F、Gですが、各柱面を上手く利用しています。展開図Gのボックス棚などは、素晴らしい発想ですね。デザイナーのセンスが光りますね!
最後にもう一度、平面図を確認して、しっかり上記の展開図を理解してください。間接照明が素材を生かした壁面詳細図
展開図の次は、壁面環境の詳細図です!
詳細図といっても、アパレルショップはそれほど込み入ったものはありません。
むしろ、素材や間接照明を生かした事例が多いかと思います。
この詳細図がどの位置にあたるかは、全体平面図でご確認ください。
下の画像は、平面図を拡大したものです。
奥壁面、トルソーでディスプレイされている位置になります。
ところで、このショップでの私のお気に入りは、この壁面に在ります。
と言うのも、この壁面素材と間接照明が素晴らしくマッチして壁面のムードが盛り上がります。
あくまでイメージですが、見え方感はこのようになります。
今では、珍しくも無いレリーフパネルですが、このパネルの表面が3次元的なので、そこに上部からの照明を当てることは、演出としてはかなり効果があると思います。
また、その空間での商品陳列はかなり訴求力を増し、お客様の購買心理に働きかけるでしょう。
この壁面からは、上部照明が無く配置されている什器に間接的に照明器具を取り付けています。(後にこのサイトでもご披露します)
もちろん、このレリーフパネルを使用しているのは、この面だけではなくショップ左壁面でも活用されているようです。
最後に、レリーフパネルについて少々お伝えして終わりにします。
基本的に、珪酸カルシウム板に美しく貼り込まれた内装用化粧パネルです。照明との融合により、さまざまな陰影を醸し出すデザイン性は、他の内装材では不可能だった空間演出を実現します。
効率良く考えられたフィッティングルーム
それでは、2ヵ所に設置されたフィッティングルームをご覧いただきます。
この記事では、「FR」と表現させていただきますね。
この店舗のFRには、他ではあまり見かけない機能が施されています。
コーナー部に設けられたり、FRの壁面を上手に利用したりと、空間の使い方のアイディアが素晴らしいと思います。
効率が良いコーナー部に設置されたFR
このFRは、コーナーを上手く使用した参考例とも言える内容です。
コーナーでの使いにくさは確かにありますが、内寸法(1350×1350)をしっかり確保したので安心です。
内部のミラーは全面貼りですが、巾木が無いのはちょっと残ですが、お客様にとっては、自分の正面とサイド面が映し出されるのでさぞかし満足でしょう。
また、このFRにはいろいろな機能も満載です。
FR内部には、当たり前にハンガー掛け、手摺りが取り付けてありますが、そこに嬉しい機能がもう一つ追加されているのです。
それは、フェイスカバーが収納できる小テーブル什器が設置されていることです。フェイスカバーとは、試着のさいに商品に化粧やその他が着かないようにするものです。
時計やピアスなどの小物が置ける、テーブルも試着時には便利ですね。
過去にもこのような機能は、まれに見ることがありました。
しかし、ここまで完璧な什器はほぼ見ていないと言っても過言ではないと思います。
そして、このようなちょっとした気配りは、きっと明日のお客様に繋がりますね!
さて、作図的なことをちょっと!
難しくないとは思うこの図面にも、覚えておきたい箇所があります。
それは、以下の作図を見ればお分かりでしょう。
上の画像は、FRの建具廻りと内部壁面のダイレクトミラー貼りの詳細図です。ご理解いただけますか?
どちらも大切な収めなので、しっかり覚えておいてください。
特に建具のハンドル取り付けがインロー式での収めなので、これについては特に意識して理解してください。
什器をドッキング、有効活用のFR
こちらは、ごく一般的なFRですが、やはりコーナーでのFRよりもゆとりがあってお客様には楽に試着していただけます。
FR内寸は、1380mm×1300mm 。
大人の女性をターゲットにしたショップでの、標準的なサイズといえます。
また、手摺り等も設置されていますので、年配者の方も安心して使用できます。
FRとしてこれ以上の説明はありません。
が、
FR出入り口建具横にベルト掛けを設けているのです。
これはとても上手い手法だと思います。
こちらが、そのベルト什器です。
ちょっとしたスペースに、気を配った感じがしますね。
試着の時に、店員さんのお勧めでベルトを同時購入して頂く可能性もあります。お客様の気持ちをくすぐる気がします。
ベルトという商品が小さいとはいえ、これってデッドスペースの有効活用です。また、間接照明を取り付けることで必ず目に入るというテクニックも憎いと感じます。
度重ねでの設計で、こういったアイデアが必ずしも生まれるわけではありません。着眼点を持って店舗に接してると、あるときひらりとアイデアが浮かぶものす。
これも、普段から店舗設計者としての精進でしょう。
尚、ここにもコーナーFRと同じ仕様のフェイスカバーが収納できる小テーブル什器が配置されます。
確認のために添付しておきます。
今回のFRの事例は、形状の違うふたつのタイプを見てきましたが、理解されましたか?
おそらくFRに関しては、特殊な機能を除いてこのふたつのパターしかありません。
ですから、今回の店舗事例をよく読んでいただき、理解されることを強くお勧めします。
「明確なVMD構成が素晴らしい婦人服店の図面事例〈Part-1〉」
ひとまず、ここで終了します。
〈Part-2〉は、柱巻き造作から壁面什器をご覧いただきます。お楽しみに!
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