今回は、先月の9月30日に投稿した「高級感を演出する百貨店の和食器売り場の作図事例〈環境図〉」の続きをお届けします。
復習が必要と思われる方は、下記からお入りください。
⇒ 高級感を演出する百貨店の和食器売り場の作図事例〈環境図〉
それでは、引き続きこの売場中央に設置する什器群をご紹介していきます。
特殊な什器は、特にありません。あくまでもシンプルにまとめた什器ですので、初心者の方もすぐに理解できると確信します。
売り場中央で使用度の高い基本什器
まずは、売場内で最も多く配置している基本什器です。
右上の基本モジュールを見て頂くと分かるように、腰のストックは脱着式となっていて、繁忙期や特売期間等には腰部にも陳列出来る様になっています。
少しでも、置き陳列のバリエーションを増やす為の工夫だと言えます。
陳列の高さに動きを付けるだけでも、見ばえは全く変わりますからね。
ただ、この場合お客様の目線では認識しづらい高さになるので、腰部分はある意味オープンストックと考えた方が妥当ですね。
このストックと陳列ライン高さを明確にしているのが、天板を堺に仕上げを変えている点です。
天板の仕上げには白の化粧板を用いて、食器に明るく清潔感のある印象を与えています。
しかし、和食器は白をベースとしたものが多いので和の風合いや柔らかさ等を感じさせるには、同系色を使う事は避けた方がい良いです。
さて本体に変わって、ストックボックスです。
この図面は、天板から下全てをストックして使うタイプです。
基本的に、このタイプを多く使う事になります。
スライド式のストックになっていますが、観音開きや引き違い戸にしても問題ありません。
ただ注意しなければならないのが、通路幅を考慮して極端に干渉する事のないようにして設計して下さい。
そして、奥行きもお客様の寄りつきを考えて天板から50mm程度セットバックさせておくことも忘れずに!
レイアウトにアクセントをつけるテーブル什器
今回の和食器売場は、とにかく置き式用の什器ばかりです。
だからといって、全部の什器を同じ形状にしてしまっては、とても安っぽい売場に見えてしまいます。
そこで、レイアウト的にアクセントとなるテーブル什器を設置しています。
本来なら、最も訴求力のある通路に面した所に設置する事が望ましいのですが、この売場では中央にレイアウトしているんです。
その狙いはというと、天然木の切り株を模した3000mmもあるテーブルは他の什器よりも存在感があるのでお客様の目引く事ができます。
結果、売場の中央へ引き込む誘導効果に繋がり、回遊性も高めてくれるんです。
ただ、基本什器よりも高さが低いので、同仕様の上置き台等を使って視認性を高める工夫が必要ですね。
かわって、もう1台不可欠なテーブルが柱前にあります。
環境柱前に設置した、テーブルの図面です。
この柱で陳列している商品を使って、実際に食卓で並べているようなディスプレイでリアリティさを演出します。
また、他の売場にある関連商品との組み合わせで季節感や和の風合いを演出できます。
レジ周りのローパーティションと高さについて
売場の什器に続いては、レジ廻りの什器をみてみましょう。
まずは、レジエリアを囲うローパーティションです。
和食器売場に限らず、飲食店や他の物販店でも良く見かけると思います。
注意して見て頂きたいのは、高さなんです。
ちょうど、人の目線の平均的な高さである1500mmで設定していますね。
ご存じの通り、中島売場ではどこからでも見えてしまうので、レジや作業台といった後方エリアを隠す場所がありません。
かといって、フロア全体の見通しを考えると高い造作壁を建てる事も出来ないですよね。
そんな時に重宝するのがこのローパーティションと言う事なんです。
意匠的には最もシンプルなパネルとガラススクリーンの構成が多いですが、コストがあればガラス部分を格子にする事でより和のイメージを強調できますね。
しかし、このパーティションにも問題点があるんです。
この物件のレジエリアが売場面積の約1/4を占めていると言う事は、1/4もお客様の導入スペースをなくしている事にもなります。
商品を包装したり、ギフト向けの接客カウンターが必要だったりで、致し方ないようにも思いますが、低いとはいえ長い壁を作ってしまっています。
また、このパーティションの前には片面の什器が設置されていて、どうしても防犯面をカバーする為に売り場スタッフを余分に配置する必要があるかもしれません。
決して悪い例とは言っていませんが、もう少し工夫が必要ですね。
出隅部分を、大胆に演出スペースにしてみてもいいかもしれません。
いろいろな案を考えてみて、お客様を楽しませる工夫をしてください。
和食器関連商品の見せ方
この図面は、レジ廻りのパーティション前に設置しているテーブルクロスを陳列とディスプレイする什器です。
カタログのように綺麗に整列されていて、見映えもいいと感じられますよね。
しかし、この状態では殆ど色しか分かりません。
柄物や刺繍などが入ったものだとちょっと判断しにくく、訴求力に欠ける見せ方になりますよね。
やはり実演するスペースがあってこそ、この陳列が活きてくるのもです。せっかく通路面に対して展開しているのに、とてももったいない気がします。
ロール状のテーブルクロスを、陳列しているお馴染みの什器を加工して見せた方がまだましかもしれませんね。
例えば、こんな加工です。
両側のパネル間にパイプを通して、テーブルクロスを巻き付けているだけの簡単な什器ですよね。
このままでは、陳列している商品も安物にしか見えません。
しかし袖パネルを縦格子パネルにしてみたり、笠木を取り付けてみたりと、いろいろアイディアが出てくるはずです。
既製什器でも、プラスαでイメージをがらっと変えることが出来ます。
楽しみながら思案してみてはどうでしょうか?
レジカウンターの機能的必要寸法について
和食器売場の事例として、最後となるレジカウンターをご紹介します。
意匠的にコレと言った特徴はないのですが、機能的に天板が1部脱着出来る所が唯一の特徴ですね。
通常は1台のレジに対して、売り場スタッフが1人という構成なのですが、繁忙期になると臨時に中央でもレジを設置できるようにしているんです。
しかし、ここに致命的な問題点があるのです。
お分かりになるでしょうか?
実は、致命的な問題点というのは、ずばりワイド寸法です。
人が並んで立つ時に、隣とぶつからず作業出来る有効寸法は最低600mmは必要なんです。
このレジカウンターを見ると、中央の寸法は450mmしかありませんよね。
これでは、互いに腕などが当たってレジを打つには狭すぎます。
なので両側の250mmの部分を削ってでも、やはり600mmは欲しいですね。
また、この左右にあるガラススクリーンですが、レジカウンターの位置を考えてみても果たして必要かどうかが疑問です。
目隠用としてもスクリーン下にある部分で十分手元は隠れるはずですから。
このように、一見レジカウンターとしてはちゃんと設計されているように見えても、設置している環境をよく考えると非常に無駄なコストが掛かってくることがあります。
中島の売場にあるレジカウンターは「コレだ!」
と固定観念をもつと、こういう結果になりがちです。
こういう時は「これいいのか?」
という疑問を常に持ちながらデザイン・設計をすべきですね。
では、この事例をもちまして、百貨店の和食器売り場の店舗事例は終了します。
最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
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