トラッドショップの”らしさ”を感じるデザイン

今回は、前回ご紹介した『ベーシックな店づくりが光る、正統派トラッドショップ《環境図_01》』の続編です。

今回の《環境図_02》では、主に展開図を中心に構成されており、店舗の仕上がりイメージがより具体的に伝わる内容になっています。

図面は、事前の調整と整理がしっかり行われているため、とても見やすくなっています。
ぜひじっくり読み解いて、存分に学んでください。

余談ですが、今ではこうしたスタイルの店舗は少なくなりましたが、当時は予算もしっかり確保されていたようで、随所に手の込んだ造作が見られます。

なお、各展開図の方向は、図面右上にある「キープラン」をご参照ください。

A 展開図、B 展開図

A展開図は、図面右上のキープランに示されている通り、店舗の正面ファサードを描いたものです。

今ではあまり見かけなくなった、大型のショーウインドウが左右に堂々と設置されており、重厚感のあるクラシカルな顔つきが印象的です。

木目調の腰パネルと、格子ガラスの組み合わせが、トラッド感を強く演出しており、正面中央には“SIGN”と記されたサインスペースを確保。

ブランド名が美しく浮かび上がるような納まりになっています。さらに、店舗内の雰囲気がウインドウ越しにうっすらと見える表現も魅力です。

ショーウインドウの奥行きや、モールディングの意図が明確に図示されており、実施設計としての完成度も高く、学ぶべき要素が詰まっています。

B展開図は、店舗内側から見たメイン奥壁面の様子を示しています。壁一面にわたって什器が組み込まれており、収納とディスプレイの両立が意識された設計です。

左右のセクションは、ハンガーパイプと引出し収納を組み合わせた什器構成で、トップスやジャケットなどを立体的に魅せる演出が可能となっています。

中央にはガラス棚を備えたキャビネット型の什器が設置され、装飾小物やシューズなどをディスプレイできるよう工夫されています。

什器全体は、造作で組まれた重厚な木製フレームで構成されており、細部には框扉やモールディングがあしらわれ、クラシカルで端正な表情に仕上がっています。

また、天井まで届く構成になっているため、什器としての存在感が強く、店舗全体の品格を引き上げる要素となっています。

C 展開図、D 展開図

C展開図は、店内から右面にあたる店内断面の様子を示しています。左側には収納引出しとハンガーを組み合わせたベーシックな造作什器があり、その隣にはミラーと縦長のディスプレイラックが設置(柱面)されています。

注目すべきは中央付近の壁面です。石目調のタイル仕上げが施されており、什器の背面でありながら空間の質感をしっかり高めています。(縦長のディスプレイラックのバック壁面)

さらに天井までの高さに合わせた造作構成は、売場全体のグレードを支える設計要素となっています。

D展開図では、C展開図よりも壁面側を見ていますが、この場所の構成に変化があり、可動棚や装飾棚が配置されるなど、商品の展開に合わせた柔軟な造作となっています。

左端にはコンパクトなキャビネット什器も組み込まれており、什器の高さバランスや奥行の違いが空間にリズムを生んでいます。

右端のショーウインドウ横には、外部からの見え方を意識したディスプレイ棚が仕込まれており、ファサードと内部空間のつながりを意識した設計です。

什器自体も框構造や面材で重厚に仕上げられており、素材感の演出に一役買っています。

E 展開図、F 展開図

E展開図は、店内からファサード側を見たウインドウディスプレイの背面とその周辺を描いています。

左右に大きく設けられたショーウインドウは、マネキン・トルソーを配置する前提で組まれており、下部には框組の腰パネルを設置。

視線の高さに変化をもたらしつつ、什器とのバランスを保っています。

右端は什器壁との取り合い部分となっており、石張り仕上げや柱巻きの処理など、素材の切り替えによる変化も見て取れます。

什器設置前の「背景」づくりが丁寧になされており、構成としての完成度の高さが感じられる部分です。

F展開図に移ると、より什器のバリエーションが増えます。

ウインドウ背面から続く什器は、ストック付きの棚什器に始まり、中央には姿見ミラーを挟んで棚構成の造作什器が連続しています。

この什器群は、収納力だけでなく商品陳列の自由度も高く、店舗運営上の柔軟性が意識された設計といえるでしょう。また、壁面の一部に石張りパネルを施し、光の反射や陰影の演出も意図された空間づくりがなされています。

什器のデザインはすべて造作で、框やモールの意匠が統一されており、クラシカルな雰囲気を損なうことなく統一感を保っています。

まとめ

今回の《環境図_02》では、A〜Fの展開図を通して、店舗全体の空間構成や什器のディテールを具体的に見てきました。

とりわけ印象的だったのは、左右対称のファサードに設けられた大型ショーウインドウと、それを裏から支える重厚な壁面什器の存在感です。

什器はすべて造作で構成されており、木部の框やモールディング、石張りパネルの使い分けなど、素材と意匠のコントラストによってトラッドな世界観が丁寧につくり込まれていました。

さらに、図面上での寸法やパーツ構成も明快で、読み応えのある設計資料となっています。

今となっては少なくなったこの手の店舗設計ですが、図面としても空間づくりとしても非常に参考になる事例です。

図面をじっくり見て、「空間をどう演出するか」「什器と内装のバランスをどう取るか」といった“仕掛け”を、自分なりに感じ取ってもらえたら嬉しいです。

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