前回に続き、デパ地下のベーカリーショップの図面事例〈造作図編〉です。
環境図は、以下のサイトを参照ください。この店舗は、Part1〜3までありますので、じっくり学んでください。
「デパ地下のおしゃれなベーカリーショップ」
Part2〈造作図〉以外の記事は、こちらからご覧になれます。
⇒ デパ地下のおしゃれなベーカリーショップ_Part1〈環境図〉
⇒ デパ地下のおしゃれなベーカリーショップ_Part3〈什器図〉
店頭ガラススクリーンの詳細図1
店頭中央に配置した、ガラススクリーンの姿図と断面図です。
W=2000mmを超える大きさなので、十分な存在感は有るのとショップのアイキャッチャーにもなります。
さらにと、シャンパンゴールドガラスフレームに文字を使ったビジュアル訴求は、お客様にインパクトを与えます。
このように店頭ガラススクリーンを設置する場合は、サッシュを出来るだけ目立たせないようにするのですが、この物件ではあえて、150mmと見付を大きくして店舗の存在を明確にしたようです。
しかも、中央に行くにしたがって段差をつけてディティールも少し凝ったものとなっています。
仕上げもゴールドメッキではなく、シャンパンゴールドと淡くしているので金物が持つ冷たい印象を和らげ、逆に暖かみさえ感じさせます。
全体の大きさに対して、金物が占める面積がとてもバランスの良い構成になっている結果ともいえます。
スクリーンにしても、単にガラスだけでは無機質な印象しか与えませんが、文字のグラフィックシートを貼る事でガラスの持つ冷たさを緩和させているんです。
では、スクリーンの設置位置に関してちょっとしたポイントを書きますので参照下さい。
断面図を見て頂くと分かるように、リースラインでもある垂れ壁のラインから店内側にずらして取り付けてあります。
これは、少しでも圧迫感を感じさせない為に少しばかり店内側にセットバックしているんです。
いくら透過性のあるガラスだからといっても、大きい為に多少なりとも圧迫感を与えてしまいます。
なので、よくやる緩和策として観葉植物や置き式サイン、物販ではトルソー等を置くスペースを設けることもあるんですよ。
これは、店舗面積によっても関係してきます。
大きな面積の店舗であればさほど感じませんが、狭くなってくるとこのスクリーンの存在が壁のように感じてしまうのです。
なので比較的小さな店舗の場合は、リースラインぎりぎりに設置するよりセットバックさせる事で圧迫感を軽減し、お客様が少しでも入り易くするように考えて設計する事が望ましいでしょうね。
店頭ガラススクリーンの詳細図2
これは、先ほどのガラススクリーンの両脇に設置されています。位置関係は、〈環境編〉展開図のA面をごらんください。
中央のガラススクリーンと同仕様で、サイズを小さくしたものです。
ただ、大きいサイズとは役割が少しばかり異なります。視認性や存在感を打ち出す為ではなく、主に目隠し的な役割の為ですね。
そのため、サッシュの見付も極力目立たせないように15mmに押さえています。
しかし、単に目隠しだけなら壁でもいいのではと考えてしまいますが、それでは店頭を閉鎖的にしてしまって入りづらいショップになります。
やはりショップファサードはオープンな空間を出来るだけ多く取り、自然とお客様が入っていける印象にしなくてはなりませんね。
せっかく奥面の壁をビジュアルグラフィックにしているので、壁を作ってしまうと通路からの見える範囲を狭めてしまうと効果が半減してしまいます。
店頭にガラススクリーンを設置する場合の注意点は、サイズバランスです。
今回のように3箇所に設置するケースは飲食、物販関係なく多々あります。
その際に、それぞれの役割が何かを見極め、尚かつ店舗の広さをも考慮し、バランスのよいサイズ(特にワイド)にする事が重要です。
リースラインからセットバックさせる寸法も中央と袖壁とで変えてみることで、与える印象も随分変わって来ます。
さらに店頭に設置するので、安全面にも配慮して必ず飛散防止フィルムを貼る事も忘れないようにして下さい。
このフィルムもタペシート風など様々なタイプがあるので、ショップのイメージに合ったものを使えます。
ガラスFIX窓の詳細図
平面図の、サンドイッチケースとトング台バックにあるガラスFIX窓の詳細図です。壁面には大理石を貼ってます。
この壁面が、隣接ショップとの店舗間間仕切りになっているのですが、全体をクローズにしてしまうと見通しが悪くなるので上部をガラスFIXの窓にしています。
これは施設側からの規制で窓や開口にする場合もあるので、基本設計時には確認しておくべきでしょう。
特に意匠面で注意すべき点はありませんが、大理石とサッシュの取り合いには気を付けて下さい。
この物件ではサッシュがフロアで共通仕様になっていたので、大理石がサッシュ際で綺麗に収まっていないんです。
この大理石は厚みが均等でなく10mmから15mmとまばらで、しかも乱尺貼りと指定されています。
するとサッシュより幅も大理石が出てしまい、あまり綺麗な見え方とは言えません。
かといって、サッシュの幅を大きくする事もできないので、仕方なくサッシュ際の大理石には小口に磨きを掛ける事で進めました。
しかしこれは苦肉の策でおすすめする処理ではありませんね。
品番の変更も検討されましたが、当時この大理石が各店舗共通となっていたので変える事ができませんでした。
このように凹凸のある石やブリックタイル等は質感があり、表情豊かな仕上がりになるので様々な所で多用されます。
なので、見切り材やサッシュとの取り合い部分には十分注意して設計して下さい。
今回はサンドイッチケースとトング台の高さがサッシュの下端まであったので、まだ直視される事はなかったので見栄え的には少し助かっています。
又、この凹凸の角が当たって怪我をする事もあるので、お客様が触れる場所にはなるべく角がなめらかなものを選ぶ方が望ましいでしょうね。
スタッフルーム用引き戸の詳細図
この図面は、柱横にできた空き空間を利用して、レイアウトしたスタッフルームの入り口引き戸の外観図と詳細図です。
設計当初は鉄扉仕様になっていましたが、法規的に木製引き戸でも問題なかったので途中で仕様変更しました。
平面図を参照したもらうと分かるのですが、このスタッフルームは非常に狭いです・・・・・。
しかも外部から入る為の建具もあるので、ロッカーを1台設置するぐらいしかできません。
このような狭いスペースの場合、建具も開き戸より開閉時にスペースを取らない引き戸が最も適しています。
又、売場側へ建具を開いたりすると什器に当たってキズを付ける可能性もありますし、万が一お客様が立っていたりすれば大きな問題にもなります。
そこでスタッフが出入りする際に、建具の前に誰もいないことを確認する為に円形の小窓を付けています。
引き戸が最も適しているもう一つの理由は、スタッフルーム内の有効面積を確保する為です。
例えば、ストックルーム側へ開く開き戸にした場合、扉が軌道する範囲には物が置けなかったりします。
又、中に誰かが入っていた時に建具を開くと、当たってしまう恐れもあります。
ショップの安全性と使う側の利便性、両方を考慮した上で引き戸を採用したんです。
なので狭いスペースに建具を取り付ける場合には安全性だけでなく様々な状況を考えて建具タイプを決めて下さいね。
安全対処策の一つとして、鍵設置はもちろんの事、「STAFF ONLY」などのプレートを貼るだけでもお客様に意識させる効果があるので必要最低限の対策はしておいた方が望ましいでしょう。
スライサー室用引き戸の詳細図
この引き戸は、スライサー室の出入口用建具です。
展開図を見てもらうと分かるように、全ての建具をビビットなカラーで統一して、デザインのポイントとしています。
ここで、建具にも関係してくる防水について少し書いておきますので、参考程度に読んでみて下さい。
食品売場や飲食店では水を扱う事が多いので、防水処理を施す必要があります。
その為、売場よりも床レベルを低くして段差を設け、水や油等を売場に浸透させないようにするんです。
ですが、使用する水量によっては段差を設けず、防水もせず簡易な乾式工法で済ませる事が出来ます。
この事例では本格的にパンを生地から作っていくベーカリーショップではないので、床はフラットのままで処理しています。
この段差が、有る場合と無い場合では建具の構造も若干変わってくるので注意がいりますね。どうしても水を扱う所では湿気が出るため、当たり前の話ですが木建具は不向きです。
湿気を吸い込んで、反ったり腐食したりするからです。こういう時はコストがアップしますが鉄扉にした方がよいでしょうね。
引き戸を設計する上で特に注意しておきたいポイントは「引き残し寸法」です。
この引き残し寸法とは、建具を引ききった時に取っ手やドアハンドルをつかめる分の余裕を持たす為の寸法のことを言います。
取っ手やドアハンドルの取り付け位置にもよりますが、だいたい建具の端から75mm〜100mm前後の寸法もあれば問題ないでしょう。
なので、法規的な問題や施設の規制等で開口寸法が指定されているのなら、この引き残し寸法を考慮した上で設計する事を心掛けて下さい。
また、開き戸と同じように開閉時の音とキズ防止の為にクッション材を取り付けておくことも忘れないようしましょう。
ベーカリーショップの造作図面事例は、これで終わりです。次回は、店内の什器類のご紹介になります。
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