資料を調べた結果、1999年の物件でした。当時はレナウンさんのダーバンの展開を手掛けていたので、この物件もその一環だったように思います。
この店舗のMDは、主に英国の高級紳士服ブランドだったようです。ただ、今では時代物だという感じもしないわけではありません。しかし、商品はとても上品さがあって私の好みでした。
HPを見ると、「ネイビー・ブラック・グレーをベースとしたモノトーンカラーを中心に、ジオメタリック柄や光沢系素材を多用」。私から言えば、古き良きブリティッシュトラッドだったようにも感じます。
バランスが素晴らしい平面計画
今回は、2回に分けてメンズショップの店舗事例をご紹介していきます。 百貨店ではお馴染みのスーツが中心の店舗ですが、主にラージサイズを展開しています。
ホワイトベージュを基調とした店舗環境に補色となる黒ベースの什器とゴールドの金物で、かなり重厚感ある空間になっています。
エントランスには、柱巻きを上手く活用したVMD演出でショップとしての顔づくりが成されています。そして、左右、奥と三面の壁面を陳列ボリュームゾーンとして構成しています。
中央什器は、壁面什器の補完用とし、汎用性ある什器を配置して様々なレイアウトに対応出来る様に計画されています。
売場内の通路もラージサイズショップだけに、ゆとりある幅を確保しつつ、無駄の無いレイアウトを確保しています。全く上手く考えられた平面計画です。
続いて、天井伏せ図をご覧頂きます。
一般的な百貨店の配灯計画でずが、柱から2方向に防火ダンパーが通っているので梁型が出来てしまっています。
天井高が、2600mmとそれ程高くはないので、柱面のディスプレースペースに、影響が出ないかが心配でしたが、何とかクリアできました。
天井照明は、既存器具移設と新設の演出照明追加による構成で、以前の売場の照度と同等の明るさがとれて安心ました。
スーツショップらしい整然とした展開図
引き続いては展開図のご紹介ですが、前述の天井伏せ図を書いた際に触れた防火ダンパーと柱巻きの取り合いがこの展開図でお分かりになれます。
まずA展開図ですが、リブ材による共通意匠を施したディスレプレー面と柱巻きを見ています。ここに防火ダンパーが丁度柱のセンターに来ているのがわかります。
B、C展開図では売場奥面と平面図の左面を見ていますが、各什器毎に陳列方法を変えて商品のゾーン分けを明確にしています。
最後のD展開図では防火ダンパーとの取り合いで、一部壁面什器と異なった意匠にして干渉スペースを設けています。
一部イレギュラーな箇所もありますが、全体的に綺麗にまとまった環境になっていると言えますね。
イメージスケッチ
このイメージスケッチでは展開図では明確に表現してなかった柱巻き部のダンパーラインを点線で明記しています。
ウィンドバックの上部意匠がダンパーによって削られている事が見れますね。 メインのディスレプレースペースだけにちょっと圧迫感を感じるかもしれません。
壁面什器に商品の姿を描いているので展開図よりも各ゾーンの見せ方がはっきり分かるようになっています。
最後に別アングルのイメージスケッチを記載して終了とします。お疲れさまでした。ここで、少し休憩を取りませんか?
ガラススクリーン付きディスプレーエリア作図事例
店舗環境図については、理解されましたか。ここからは、店舗内での各部詳細図をご紹介していきます。
店舗設計においては、通常の業務であって実施図面にあたります。これから施工図に進化していきます。
まずは平面図上のファサード左側にあるディスレプレー部です。
L型のパネル組での構成ですが、1面をガラススクリーンにして透過性あるディスレプレーエリアにしています。
こうする事で通路からの視認性を向上させ、且つ多方向に対するVMDの効果を発揮させる事にも繋がります。
また、このディスレプレーパネルには、後にご紹介する柱巻きや平面図右側のディスレプレーステージ部と共通の面材を取り付けて、統一感あるファサード意匠にしています。
ステージ付ディスレプレーパネルの作図事例
次に、平面図の右側のステージ付ディスレプレーパネルの作図です。 左側のディスレプレーと違って、ステージを設けてボディーやトルソーでの演出が主となります。
この左右のディスプレーで違った演出をする事にも意味があります。 それはステージによる高さの違いで、ディスプレーに変化を与え、顧客の視線の動きをもたらする事が出来ます。
その結果単調な演出になる事を防ぎ、動きあるVMDでショップへの誘導を促す事にも繋がるのです。
さてここで設計時での注意点を1点。
このディスレプレーステージにも共通意匠として面材を取り付けていますが、必ず面材をどこから始め、どこで止めているかを必ずチェック出来る様に点線などで表現しておく事が大切です。
店舗の顔となる柱巻きディスプレーエリアの作図事例
この作図は、ファサードエリアの中心でもある柱巻きの平面図です。 店舗の顔となるエリアです。
展開図は、続いて紹介しますが、まずは平面図を理解してください 。
柱の前面をディスプレーバックとして利用したショーウィンドで、前述したディスプレースペースの中でも一番広い面を有しています。
作図右側には、3箇所のディスプレーに共通した面材部分の詳細図とステージ腰部のガラススクリーンの断面図を表記していますので参照下さい。
それでは、次に進みましょう。
柱巻きディスプレーエリアの展開図事例
ここからは、展開図が続きますが、平面図を照らし合わせながら進んでください。
最初は、柱巻きディスプレーの正面を表した展開図ですが、
向かって左側の作図が奥面の柱巻きパネルを表現し、右側はガラススクリーン面を表記しています。
柱巻きパネルの仕様は、黒染色のクリアラッカー仕上げで面材の内側をクロス貼りにして、意匠にメリハリを付けています。
このクロス貼りのスペースは、ビジュアル写真にして、よりショップイメージの打ち出しをするアレンジも可能で、工夫次第で様々な演出の出来るディスプレースペースになります。
また、防火ダンパーによって高さの制限がありますが、ボディーやトルソーでのディスプレーには問題ないでしょう。
上の作図は、柱巻きを右側から見た展開図です。
図面内のステージ腰部にある面材を見て頂くと柱巻きパネルに当たって収まっているように見えますが、この面材はここで切れてしまっているのです。設計時の落とし穴ですね。
対処方法としてはステージのワイドを縮めるか、もしくは腰の面材を柱巻きにも通してしまう方法がありますが、この場合は意匠的、コスト的にも前者のステージワイドを縮める方が望ましいでしょう。
さて本題ですが、ステージの腰部と柱巻きにはサイズ違いのロの字の意匠があります。 ファサードの共通意匠となっているのでサイズと割り付けのバランスが重要となってきます。
この柱巻きだけでなく、3箇所あるディスプレースペース全体でのバランスを考慮しなければ、折角の共通意匠がバラバラな見え方になってしまうので、必ず展開図などで検証する必要があります。
最後の展開図となりますが、柱巻きを裏面を表してますが、裏面のロの字意匠にスリットを埋め込んでパーツを取り付けられるようにしています。
作図の右側のb平面詳細図を参照して下さい。
この図面では機能を優先してパーツを取り付けていますが、ロの字の意匠内をクロスからミラーに替えて柱面をスッキリ見せる事も出来ますね。
後記
今回の店舗事例は20年前の図面集ですが、よくよく見ると、今の店舗づくりに通用する材料は多く有り、そのどれをとっても活用できるものばかりです。
そうなんですよ、店舗設計は、繰り返しの連続で、それほど難しいものでは無く、店舗そのものの機能をしっかり把握できれば誰でもなせるワザだと確信します。
現実、私もこの業界にいたわけでは無く、独学でここまで来ました。みなさんも可能性はあります。ですから、図面屋を目指す方は、毎日の努力を怠らないことです。
次回は、今回の続きとして店内の各詳細図を紹介していきますので、楽しみにしておいてください。
尚、ビッグサイズのメンズショップの各詳細図_Part2は、こちらから!
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