今回から、百貨店の和食器売り場の店舗事例をご紹介します。
現在は大型のIKEAやニトリ等の出店で、比較的低価格の商品が手に入る時代となっています。
以前は大きな面積で展開していた直営の食器売り場も、どんどん縮小されたり、テナントの出店を多く取り込む百貨店が増えてきていますね。
この和食器売り場も、設計したのは約5年ほど前になります。今でも、この広さを確保しているかは定かではありません。
が、色々な意味で勉強になる店舗事例です。
ナチュラルなイメージに仕上げた平面プラン
百貨店の和食器売り場平面図主な商品としては、陶器や漆器なので様々な色合いをもつものが多いです。
そのため、環境や什器に使用する素材や色目等には注意しながらデザインや設計しなければなりません。
最も一般的な環境イメージは、ナチュラルな色目の什器と白を基調とした環境か、濃い木目を使って高級感を演出するかのどちらかでしょう。
平面図右上の柱を囲むエリアには、レジとギフトに対応出来る接客スペースを設けています。
ここでは商品が割れ物と言う事もあり、包装台と箱類などをストックしておける収納什器が必須となります。
この接客とレジエリアを除く部分は、陳列エリアとなるわけですが、中でも4本の柱が重要なデザインポイントなりますね。
後でご紹介しますが、この視認性の高い4本の柱でディスプレイと演出をどう考えるかで売り場の見え方に大きく影響してくるんです。
なので、この柱のデザインには最も多くの時間を掛けて下さいね。
残りの什器は、殆どが2段テーブル型の什器で構成し、商品を置く見せ方です。
しかも、どの什器にも地袋が付いていて、商品のパッケージタイプの在庫を収納しておようになっています。
大きな柱で見せ場を造った展開図事例
百貨店の和食器売り場展開図平面図に続いては、展開図をご紹介しましょう。
さて、展開図を見てこの和食器売り場に大きな問題があるのは分かるでしょうか?
答えは、B展開図の柱間距離で、かなり接近していますよね。
構造的な問題で稀にこのような状態になるのですが、設計するに当たってはかなり頭を抱える場所といえます。
寸法上は約2000mmあります。
しかし、実際にこの2本の柱の前に来ると大きな壁のように圧迫感を感じるんです。
ちょうどパースがありましたので、見て頂ければすぐに分かると思います。
アングル的には少し見難いですが、太い壁のように見えませんか?
では、この見通しも悪くなる売場を改善する方法はあるのでしょうか?
では、展開図をごらんください。左側にエスカレーターがあります。
このエスカレーターからが、もっとも集客の見込めるという事から、19通りの柱付近がこの売場の見せ場となります。
なのでこの柱は陳列よりも、演出やディスプレイ用として考えて造作をあまり施さないシンプルな意匠設計がこのましいですね。
しかしこの場合、和食器売り場だけではなく、このフロアの共通意匠との整合が必要となってきますので注意して下さい。
逆に、中央の柱を改善するのならば、陳列面を2面だけにする等の考え方もありますね。
中島の売場にとって柱は陳列にボリュームを持たせる事の出来る唯一の場所なので、百貨店側とすれば、もったいないと言われるかもしれません。
しかし、見通しの悪さや圧迫感を感じるのはお客様なので、この点を忘れないように設計する事が大切です。
最後に残りの展開図も添付しておきますので合わせて参照下さい。
和食器売り場での柱巻きディスプレイについて
先程、和食器売場の展開図をご紹介した際に、問題点として取り上げた柱を詳しく見てみましょう。
既存柱をH型に造作で囲む形状は、やはりホームファニシングエリア全体で共通になっていて、この意匠を崩すことはどうも無理のようです。
※この柱意匠の問題点については下記記事を参照下さい
※この柱意匠の問題点については下記記事を参照下さい。 百貨店の和食器売り場展開図では、まず柱の意匠を見て見ましょう。
通路面に対してのみ、凹んだ部分を取り替え可能なパネルでディスプレイ用とし、残りの面は陳列用としています。
シーズンや商品によってバックの色や柄を替えられるという点が、この柱環境の特徴となっていたようです。
ただ、ここで考えておくべき注意点が一つあります。
それは、ずばり和食器の陳列に関してです。
アパレルや雑貨と違って和食器には置く陳列しかなく、見せ方のバリエーションが最も少ない商品の一つだといえます。
そうすると、いくらバックパネルを替えても各柱での見せ方が殆ど同じなので、訴求力が低いディスプレイとなってしまうんです。
しかも、食器類のほとんどは単品よりセットで購入される傾向が多くあります。
湯飲みと急須、お皿とお椀などですね。
このセット物をディスプレイするにはそれなりの面積が必要で、尚かつ手に取りやすい位置に陳列する事が必須です。
結果、単に棚によるディスプレイだけでなく、他に演出用の什器が不可欠となります。
そこで、最も簡易な什器として考えられるのがテーブルです。
テーブル1台を追加するだけで、棚だけの場合より訴求力のある見せ方が出来るのです。
しかし、これは1案にすぎません。
是非いろんな売場を見て、バリエーションある見せ方を研究して見て下さい。
最後に、この柱の展開図と各断面図を添付しておきますね。
和食器売り場の柱巻き陳列について
柱巻きのディスプレイに続いては、陳列についてです。
柱巻きの記事でもふれましたが、和食器の商品陳列には置き式しかなくバリエーションがありません。
お皿等は立てて見せる事が出来ますが、これはあくまでもディスプレイとしてのみですね。
店側としては多くの商品を陳列し、購入してもらいたいという意向はよくわかります。かといって、量販店のように何個も重ねて陳列したりすれば、いくら高級な和食器を扱っていても安物にしかみえません。
では、どれぐらいの陳列数がベストなのでしょうか。実際に食器売場の実例を挙げて見て見ましょう。
各商品の陳列数を見てみると一目瞭然ですが、左の画像では10個以上を積み重ね、しかも隙間なく売台に置いていますよね。
一方右側の画像はというと、多くても2、3個程度を積み重ねしかありません。
実質左側の画像はセール中の時期らしく「質よりも量」といった印象を受けますね。
この実例から見て取れるように、陳列する1商品量も重要ですが商品間の「隙間や空き空間」を上手につくって上げられる棚サイズや、テーブルサイズを考えておく必要が私達設計者にはあります。
単に依頼された棚サイズを描くのではなく、実績と経験値を活かした設計を心掛ける事がとても大事ですね。
最後にもう1面の展開図を添付しておきます。
天吊りルーバーの演出と素材について
この図面は、演出スペースにアクセントとして設置したスチールルーバーです。
中島の売場では唯一柱でしか、高さを活かしたディスプレイができません。
その為、どうしてもお客様に売場を明確に認識してもらう事が難しくなります。そこで多用されるのが、吊りサインやこの天吊りルーバーなんです。
シーズン毎に演出物を吊る事でより和を感じさせる事が出来、また売場の位置を明確にする事にもつながります。
今回の和食器売場では2台を連ねて設置しているのですが、柱間の距離的な問題と合わせて考えると演出的には若干うるさいようにも感じますね。
では、素材についてはどうでしょう?
素材もスチール焼き付け仕上げなので、和のイメージには少しそぐわない感じもします。
やはり、和のイメージに最もマッチしているのは木目でしょう。
木目素材は和食器の持つ冷たさを緩和し、尚かつ和のイメージを強く印象付ける事が出来るんです。
しかし金物素材でも鋼材の太さや、色合い等によってはモダン和風としてマッチさせる事も可能なんです。
これらの事から、和食器売場にはやはり木素材のルーバーが風合いある演出には最も適していると考えられますね。
この図面事例で、和食器売り場の環境編は終了とします。
次回は、什器編をお伝えします。
最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
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