デパ地下のベーカリーショップ、今回が最後の〈什器編〉ですが、記事内容を通して何か質問があればお問い合わせください。
初心者の方なら大歓迎です。もちろん、学生さんの同様です。
図面は基礎が大切なので、当サイトを活用して一人前の図面屋を目指してください。
「デパ地下のおしゃれなベーカリーショップ」
これまでの記事は、こちらからご覧になれます。
⇒ デパ地下のおしゃれなベーカリーショップ_Part1〈環境図〉
⇒ デパ地下のおしゃれなベーカリーショップ_Part2〈造作図〉
ゆったりとしたレジカウンターの詳細図
では、ベーカリーショップのレジカウンターの図面事例からご紹介します。
店舗スペースから見て、ちょっと大きめな什器となりますが、余裕でレジ台が3台を置けるレジカンターとなっています。
ベーカリーショップとしては全国展開している程メジャーな店舗で、都市型百貨店の出店も相まって、店名だけで集客が取れる強みを持っているんです。
そのため、時間帯によってはレジ1台ではとうてい対応が追いつきません。ですので、3台設置しているのです。
特に印象的なのがレジカバーに文字グラフィックを貼り付けている点で、これはファサードのスクリーンやレジバック壁面のものと同じで、ひとつのデザイン要素にもなっていますね。
ただ、この文字などでのグラフィック処理も以前ではトレンドで、様々なショップに多用されてきました。
今では、それ程って感じもしない気はありませんが・・・。
続いて、断面図とレジカウンターをデザインや設計する上でちょっとしたアイディアを書いていきましょう。
断面図は、5箇所作図しましたが、参考となりえる図面だけを添付しました。機能的に必要な、有効寸法やサイズ等を見て頂ければ良いと感じます。
さて、レジカウンターをデザイン、又は設計する場合にちょっとした気配りで、お客様にとって大変利便性のあるものがあります。
それは荷置き台なんです。
皆さんご存じとは思いますが、この荷置き台は結構忘れられている事が多いんです。
特に食品売場では、男女問わずあらゆる年齢のお客様が来店されます。
沢山の荷物を抱えて来られる方も中にはいらっしゃるので、その時ちょっと荷物を置ける場所があればとても重宝がられます。
意匠に干渉しない程度のサイズと形状で、腰面に取り付けておくだけ! 尚、奥行きは150mmぐらいで十分でしょう。
このようにちょっとした気配りで使う方に便利な機能を考える事もデザインや設計する我々には大切ですね。
機能面を優先したレジバックカウンターの詳細図
レジカウンターの後ろに設置する、カウンターの詳細図です。
レジカウンターのスペースでは用をなさないために設置した、いわばサイドカウンターの役目を担います。
売場内什器とは違い、意匠を施すよりも機能を優先した什器づくりになっています。
ただ、お客様からレジカウンター越しに見えるので、キャスター付きストックを設置するのに少し迷いましたが・・・・・。
夕刻の忙しくなる時間帯で、ストックを出しっぱなしの状態になる恐れがあり、見た目にも良くなく、最後にはつまずいて怪我をする恐れも考えられます。
本来は、2つのカウンターの通路巾を充分に取り、スタッフ同士が無理なく通れる様にする事で、この懸念は解消されるのです。
しかし、この現場では760mm程度の通路しか取れずに悩みました。
⇒ 〈環境図〉平面図・展開図を参照下さい。
せめて900mm以上は欲しかったような気もしますが、やはり売場優先となってしまいました。
また、スライサー室からの出入りも考えると左右の角はとても危ないですね。この場合、天板の角を隅切りして、ピン角にならない様に工夫が必要でした。
人の交差する場所に設置する什器には、何らかの安全対策を施すことが、極めて重要であると感じました。
尚、以下にその安全策のヒントとなる情報がありましたので添付しておきます。
安全対策といっても難しい加工をする事ではなく、小口をクッション性のある素材にするちょっとした工夫です。
家具メーカーの既製品でありますが、サイズが決まっていますので注意して下さい。
では、最後に断面図を載せておきますね。
フレームとガラスで仕上げたデニッシュ什器の詳細図
この什器は、店頭のガラススクリーン背面に設置しているデニッシュ用フレーム什器です。
この後にご紹介していく中央什器やトング台とは違い、スチール角パイプ組の什器にしています。
店頭に設置している事もあり、中央什器の様にあまり重厚感ある印象よりも出来るだけスッキリさせたいというデザイナーの意図が伺えますね。
ただ棚下照明用のコンセントが露出になってしまうところが、唯一の難点で・・・・・・。
そこで、床面に近く一番奥まった所に取り付けましたが、オープンな什器の為にどの方向からも見えてしまいます。既製のメッシュカバーなどで隠す工夫が必要でしたね。
さて、このフレーム什器も含めてベーカリーショップでは商品を乗せるトレーやカゴのサイズが基準となって形状等を設定します。
そのため、事前にトレーやカゴのサイズを確認しておく事がポイントです。
トレーなどをぎちぎちに並べるよりも、若干の余裕をもった陳列の方が見栄えもいいですからね。
このフレーム什器には、上2段に棚下照明を取り付けられています。
メーカーによっては食品陳列用の器具もありますので、一度各メーカーのホームページ等でチェックしておくと良いでしょう。
また、LED照明の普及によりコンパクトなサイズの器具も最近では多く見られるので、フレーム内に収めてしまう事も可能です。
シンプルな構造だけに、なるべく影になるようなものは省きたいですよね。
ラウンド型テーブル什器の詳細図
店内中央に設置したラウンド型のテーブル什器です。
少し見えにくいですが、平面図にはトレー位置を点線で表現しています。
トレーを表現した事で、この什器の改善点が明確になりました。それは什器の奥行きを調整すべきだった点です。
一度は、描いた図面ですが良くないところは反省点してすぐに修正にかかるのも大切です。
現状の図面では、上置き台と本体との段差が150mmしかなく、商品の見える範囲が少なくなってしまします。
せめて300mmは欲しいところですね。
そこで改善案として、本体の奥行きを大きくするプランと、上置き台の奥行きを小さくするプランがあがってきます。
しかし、本体のサイズを替えると店内通路にも影響するので、上置き台のサイズを変える方が良策だと閃きました。
これはどんな業種の什器にも当てはまる事であって、やはり主役である商品(パン)が見やすく、取りやすい什器サイズが基本となるのが当たり前!
結果、ご覧の事例に至りました。
次に、この什器の意匠においてのポイントはランダムのリブ材です。
バックの、SUS鏡面プレートが見えるリブ間寸法を同サイズにして統一感を持たせていますが、リブ材のランダム貼りにもある程度規則性が必要ですね。
あまりにもばらばら過ぎてせっかくの意匠がチープなものになってしまいます。
基準となるサイズを一つ決めて、そこから同じ分だけ大きくしたり、小さくしたりする方が最もバランスが取りやすくなります。
基本的にデザイナーの感性に大きく左右されるランダム意匠ですが、バランスも大事と言う事も忘れないようにしてください。
プロモーションテーブルの詳細図
このテーブルは、中央テーブル什器の横にレイアウトしたテーブル什器です。
プロモーション用什器とは、試食もかねて新製品やバゲット等を一口サイズにカットして提供する、いわゆる実演台のようなものです。
カットした際のパンくずが床に落ちないようにする為に、天板の中央部をスノコ状にして下に落とすような工夫をしています。
それでは、仕上げや設計上での注意点を挙げています。
この什器、天板中央のスノコをガラスに替えて間接照明を取り付ける仕様にすると、ちょっとしたディスプレイ台としてアレンジ出来ますので色々工夫してみて下さい。
仕上げ材として使っているチェリー材は、年数が経ってくると渋い艶のある色あいになり、味わいあるものになってきます。ですので、テーブルや家具によく使われる素材です。
また、手触りがなめらからで木目も比較的綺麗な材料としても有名ですので、お客様の手がよく触れる什器にはとても適していると言えますね。
ちなみに色合いの変化はこんな感じです。
最後に、腰面に使用しているランダム貼りのリブ材ですが、この什器の横に設置しているテーブル什器と仕様は合わせて考える事が大切です。(当たりまえのことですが・・・。)
店内の什器は、必ずしも合わせることはありませんが、この場合に関しては統一仕様と考えるのが順当だと思います。(※壁面什器とのバランスも同じです)
この実演テーブル什器には抽斗やストックがあるので、人間工学のもと最低限のサイズ等も確保する事が肝心です。
什器というものはデザイン性を優先しすぎて、機能面がおろそかになることが少なくはありませんが、やはり人が使うものですから細心の注意を図るようにしてください。
ベーカリーショップの必須什器トング台
ベーカリーショップには欠かせない、トング台の三面図とその詳細図です。
このトング台のサイズはトレーのワイド寸法が基準となりますが、点線で表現しているのでどれだけのトレーを置けるのかがこの図面で直ぐに分かります。
設計上での注意点は、トレーサイズの他にトングを掛けておくパイプの位置ですね。
今回は少なくとも1000mm以上の位置に設定しておきましたが、問題は無いでしょう。
ここで、ひとつ注意しておく事はトングを掛けるパイプの素材です。
これは、アパレルショップのハンガーパイプでも同様ですが、トングによってパイプにキズが付いたりしますよね。
焼き付けの場合、塗膜が剥がれたりして汚らしいイメージを感じます。この場合、出来れば耐久性があって極力キズが目立たない素材を使うようにして下さい。
最も代表的なのは、この事例にも使用している、ステンレスヘアライン(SUS HL)ですね。これに勝るものはまず無いと感じますので、私はいつもこのような場合は上記素材を使用します。
続いて、上部のサインプレートの役割について書いています。
このトング台には、上部にパンの焼き上がり時間をお知らせするサインプレートが取り付けてあります。
これはお客様に対してとても親切で、利便性あるものなので是非参考にして下さい。
店頭からでもある程度視認出来るぐらいの大きさでないと、このプレートの効果はあまりありません。また、文字の大きさと色についても要注意です
この図面事例では、有効高さが34mmなので少し小さいかもしれませんね。
サインプレート全体の文字バランスを調整しつつ、はっきり見えるサイズに設定する事が重要です。そして文字フォントも事前に設定しておいて下さい。
ここでは、マグネット式での文字プレートを使用していますが、毎日使うものなのでマグネット式だと、つい乱雑な貼り方になって良くないかもしれません。
ですから、当時は差し込み式でもと言う意見も聞かれましたが、これ如何に・・・・。
まあ、皆さんもこれに関しては一度考えるのも悪くわないかもしれませんね。
最後に、今回の図面事例でベーカリーショップの図面事例は終了します。長い間のお付き合いありがとうございました。
ベーカリーショップは、過去にいくつも設計してきましたが、今回の事例が今のところ一番まともかと感じます。
出来ましたら、もう一度はじめから見直してご自分のものとしてください。
最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
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