「私たちが日常的に親しんでいる和食店は?」
と聞かれれば、うどん・お蕎麦を思い浮かべる人は多いと思います。
そんな日本人なら、誰もが馴染みのある蕎麦屋が今回の事例です。

では、環境図編から始めます。

おおきな通路でゆったり感のある平面レイアウト

小さな店舗で席数を上手く確保した蕎麦屋の平面レイアウト

厨房を含めて約20坪とこじんまりとした小さな蕎麦屋の店舗ですが、36席分のテーブルを確保できています。
客席の中央には、低いパーティションを設けて、お客様同士の目線が合わないように考慮しています。

厨房前のデシャップカウンターは、スタッフとお客様の導線が混ざる箇所なので、通路を大きく取っています。
ただレイアウト上の問題で、パントリーカウンターだけが突起した形になってしまいました。

ここで、飲食店の平面レイアウトを考える上で重要なポイントをひとつ挙げておきましょう。
通路幅ももちろん重要なのですが、同じぐらい客席間のサイズも考慮すべき点です。

店頭にある、サンプルケース横の客席4つと厨房前の3つに注目して下さい。

隣り合う椅子と椅子との間にある隙間が、倍以上ある事がわかります。
実際に食事をする時には変わっていきますが、この隙間を狭くし過ぎると窮屈感を感じさせてしまう場合もあります。ですので、最低200mm以上ぐらいのスペースを設けることをお勧めします。

小型店舗だけに客席数の確保も大事ですが、座って食事をされるお客様同士の良い距離感も考慮しつつ、最大限の席数を取れる計画が望ましいです。

市松模様の壁面がアクセントになった展開図

小さな店舗で席数を上手く確保した蕎麦屋の展開図1

まず、A展開図です。

外観には、等ピッチに配置した化粧柱間に腰壁とガラススクリーンを設けています。
上部はオープンにして、開放的な印象を与えてくれています。

スクリーン以外の仕上げは、白木の色に近い木目の化粧板を用いて和のイメージを演出し、明るく馴染みやすい店構えにしました。

次からは、店内の展開図です。
小さな店舗で席数を上手く確保した蕎麦屋の展開図2

店内にも、店頭の腰壁で使用した木目意匠をそのまま反映し、じゅらく風のクロスと組み合わせることで、より「和」の雰囲気造りに役立っています。

ただ、この二つの仕上げだけでは若干殺風景でもあるので、店内の左右の壁面をそれぞれ異なる素材を使った市松模様のアクセントを設けました。

小さな店舗で席数を上手く確保した蕎麦屋の展開図3

小型店舗で壁として見える面は少ないですが、この仕上げの切り替えで間延びしがちな空間全体をギュッと引き締める効果を与えてくれます。

しかし、あくまでもアクセントなので、異なる素材を使いすぎないようにバランスも考えてデザインすることが必要です。

飲食店の設計に欠かせない防水区画図

小さな店舗で席数を上手く確保した蕎麦屋の防水区画図

物販店に比べて、施工上の取り合いが多いのが飲食店です。
電気、空調、防災、そして給排水やガスなどとの関わり合いが多くあります。

中でもこの防水区画図は、厨房で使用する大量の水を客席に浸透させないために設置する、コンクリートブロック(以下CB)の指示図面です。

また、厨房内で使用した水を排水するための溝と、その水に含まれた余分な油などの不純物を取り除くグリストラップの位置を指示する図面でもあります。
図面上には、CBを何段積むかの指示と駆体からの追い出し寸法を明記して置くことが必須です。

基本設計の段階では、ここまで詳しい寸法明記は必要ありませんが、厨房内の壁厚を設定する場合に、このCB図を理解しておけばスムーズに進める事ができます。

赤い文字で、CBを積む段数と範囲を記しています。

また、図面上段には各厨房内の壁の断面図を3つ表示しています。
拡大しておきましたので、参照ください。

小さな店舗で席数を上手く確保した蕎麦屋の防水区画図の断面図

この断面図は、CBの他に防水層の厚みとその高さを明記するようになっています。

デシャップ壁開口枠詳細図

小さな店舗で席数を上手く確保した蕎麦屋のデシャップ壁開口枠

こじんまりとした店舗だけに厨房器具や什器の配置には一工夫が必要でした。

従来の設計では、厨房と客席間を出入りする開口部を除く部分には防水壁を設けます。
しかし、今回は必要な厨房器具の種類と配置を考えると、什器をこの防水壁の代わりにしなくてはなりませんでした。

そのため、壁をどこまで建てるかを明確にする範囲と開口枠との取り合いがわかる図面が必要となり、デシャップカウンターの天板を含めて図面化しています。

この図面で明記させている点は、開口枠の位置と高さ、厨房器具の吊り戸棚の補強指示、そしてデシャップカウンターの天板との取り合いに対する注意です。

いずれも展開図や平面図に、文章で表現出来る内容と思われるかもしれません。それを敢えて、別図にすることで、よりわかりやすく明確な指示が出来るという点が大きな理由です。

厨房壁面に取り付けた排煙処理用ガラリ詳細図

小さな店舗で席数を上手く確保した蕎麦屋のガラリ詳細図

厨房廻りに関連する図面が、もうひとつ続きます。

B展開図で、壁面の左上にガラリを取り付けていました。 これは、この壁の向かい側にあるストックルームの排煙処理用のガラリです。

万が一火災が発生したと時に、そこにいるお客様とスタッフを安全に避難させる事がまず第一です。
火災時に最も危険なのは炎と煙といわれているので、このガラリで密閉されたストックルームから煙を逃がすために法規的に設置が義務づけられます。

法規上、様々な条件で適用できない場合もありますが、概ね密閉された部屋の面積の1/50の開口面積で対応できます。
排煙面積を算出する場合に備えて、この数値は覚えておくと便利です。

店頭で「和」を演出する暖簾掛け詳細図

小さな店舗で席数を上手く確保した蕎麦屋の暖簾掛け詳細図

環境図の最後は、店頭に設置した暖簾掛け詳細図です。

和食店では、定番といっていいほど「和」を演出するにはこの暖簾は欠かせないアイテムとなっているようです。

和食店では、「和」を演出するに暖簾は欠かせないアイテムとなっているようです。定番と言っても良いかもしれませんね。

店内のデシャップカウンター上部にも、サイズを小さくした暖簾が掛かっているので、統一感ある演出が出来ています。

暖簾を掛けるために必要なものは至ってシンプルで、掛け棒と受けです。
詳細図をご覧ください。

小さな店舗で席数を上手く確保した蕎麦屋の暖簾掛け詳細図2

掛け棒は暖簾のサイズと重量によって、棒が垂れる事のないように太さを設定しておけば特に問題ありません。
受けについては、棒を落とし込んで簡単に外れることのない程度の深さと厚みが必要です。

次回は、蕎麦屋の什器図編をお伝えします。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

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